​工房

工房
​ ふじい製作所の工房は、兵庫県小野市にあります。作業ができる納屋のついた物件を探していて、タイミング良くたまたま小野に出会えた、という感じでした。しばらくの間空家だったため、まずは家の水廻りのリフォームをお願いし、居間とキッチンは自分たちで床を張り、壁を塗り、とりあえずなんとか住める状態に。あとは少しずつ時間を作りながら、自分たちで手を入れて行こうと決めます。この頃は、お風呂とトイレに扉もなく、大きな布をぶら下げて、来客時にはご迷惑をおかけしたものでした。工房には、動力を入れ、機械を運び込み、材料を買い、少しずつ器を作り始めました。​2010年の暮れから、2011年にかけてのことです。

​材料

材料
丸太
 ふじい製作所では、様々な種類の木材を使っています。漆の器には、トチやサクラを多く使い、お盆にはクリ、お箸や菓子切にはコクタン、コーヒーキャニスターにはウォルナット・サクラなどを使います。それぞれに色、木目、硬さ、香り、漆との相性など特徴があり、作るものによって使い分けています。ここに紹介している定番のもの以外に、展覧会のときにだけ珍しい材料や木目を用いて制作することもあります。例えば、コーヒーキャニスターであれば、外箱をトチのちぢみ杢、内箱を神代ケヤキで組み合わせて作ったり、ウォルナットの珍しい杢の材で作ることもありました。これらは、材料が手に入ったときしか制作できないので、お客様にとってもいい出合いになればいいなと思います。
 材料は飛騨高山の材木屋さんで購入しています。初めのころは板で購入していましたが、数年経ったころから丸太で購入し、製材する際の板の厚みも、こちらで決めることにしました。お椀や鉢など、高さのある器を作り始めたことがきっかけで、そのようなものは厚く、平皿は薄くといった具合に一本の丸太で数種類の厚みに挽いてもらっています。

​漆かぶれ

漆
​ 漆を塗っているというと、必ずと言っていいほど「かぶれませんか?」と訊かれます。山に生えている漆の木に触れてかぶれたという人はたくさんいると思いますが、漆の樹液でかぶれたという人は少ないのではないでしょうか。漆の仕事を始めた当初、自分は皮膚が強い方だからたぶん大丈夫かなと軽く考えていましたが、それは大間違いでした。作業中は漆に直接触らないように気をつけているつもりでも、知らない間に付けてしまい、手首から腕へとかぶれていきました。やがて全身に広がり、まぶたまで腫れてしまいました。漆が付くはずのないところまでかぶれるのは、不思議です。藁をもすがる思いで皮膚科へ行きますが、お医者さんからは「漆から離れなさい」と言われてしまいます。漆かぶれを治すためには漆から離れる。お医者さんは、ごく当たり前のことをおっしゃったのですが、当時の私は、仕事なのにどうしよう・・・と困ってしまいます。仕事なのですがと伝えると、漆はアレルギーだから離れた方がいい、と言われてしまいました。
薬は塗っていましたが、作業は毎日しますのでまったく快方には向かわず、さらにひどくなっていきました。次の通院でお医者さんからは「本当に漆触ってない??」、私「はい・・・」(嘘です)そしてようやく、体が慣れるまで我慢するしかないと心に決め、皮膚科へは行かなくなりました。一番ひどかったのは腕でしたが、耳たぶや太ももの内側など、皮膚の弱いところが次々にかぶれ、水泡になりました。腕に保冷剤を当て、包帯でぐるぐると巻き、掻かないようにして寝ていました。かぶれまくっている私に、上司の方がおっしゃったことは、体に漆をつけないように、ということでした。どんな作業をしている時でも漆が付かないように気をつけ、塗っている時だけでなく、手袋を脱ぐときにどこを持つか、置く時はどのように置くかなど、細かい注意が必要だと教わりました。触れないようにするということは、とてもシンプルなことですが、実際に触れないように作業することは、とても難しいことでした。かぶれては少し良くなり、またかぶれの繰り返しを1年近く続けていくうちに、作業に慣れ、体も慣れていき、少しずつかぶれにくくなっていきました。​
漆